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■DV防止法 (2003/4/27)

 強制的に相手を従わせる行為とは暴力であるが、この場合に用いられる腕力、
もしくは肉体への物理的苦痛を誘発するような言動、これらを用いずに”暴力”が
果たして成立するのだろうか。
 心的外傷後ストレス精神障害、即ちPTSDと呼ばれる物の場合、物理的苦痛
だけではなく言葉での嫌がらせでも症状が起こる。被害者保護と云う観点から
見れば、婚姻関係にある者がPTSDである事を知っていて暴言を吐いた場合、
刑罰の要件たりえるのか。

・配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律 (DV防止法→
第一条 配偶者からの暴力とは、配偶者からの身体に対する不法な攻撃であり
     生命又は身体に危害を及ぼすものを指す(抜粋、助詞の一部を手直し)

 最初の疑問の範囲は、飽くまでも物理的行使ではない影響さえも、DV防止法の
範囲に於いては”暴力”とされてしまうのか否か、と云う話である。だが、生命又は
身体に影響を及ぼすものがこのDV防止法で定めた”暴力”であり、物理的行使
なき配偶者への行動は暴力たりえないと云う事になる。疑問の答えは否である。
 そして二つ目の疑問である、PTSDの場合での暴言が暴力たりえるのか否か、
と云う疑問も「同じく否である」となるだろう。PTSDそれ自体が生命又は身体に
重大なる危機を意味する物ではなく、準じて起こりうる危機を鑑(かんが)みては
くれない。即ち、直接的でなければDV法の要件とはならないのである。


 全く知らない機関なのだが、内閣府男女共同参画局とやらが行った全国調査に
よって、3年前に行われた同調査の結果との比較データが発表されていた。
『何を暴力と見なすか尋ねたところ、「平手で打つ」を暴力と思う女性は73%と
 3年前の前回調査の53%に比べ大幅に増加した。
 「誰のおかげで生活できるんだ」「甲斐性なし」などと言うことについては、
 女性の49%、男性の47%が暴力だと回答。
 「殴るふりをして脅す」「見たくないのにポルノビデオ・雑誌を見せる」も男女とも
 半数以上が暴力と見なし、前回よりも10ポイント前後の増加となった。
 同局では「暴力に対する認識が高まったことの表れ」と見ている。
 (26日Web毎日新聞より抜粋)』
 まずDV防止法についての意識調査であるにも関わらず、何を暴力と看做すか
などと云う馬鹿げた設問が存在する事が、そもそも不思議である。DV防止法は
前述の一項(DV防止法での”総則”、つまり基本原則にあたる)にもあるとおり、
”暴力”の範囲を明確に示している。「暴力に対する認識が高まったことの表れ」
と云うコメントはDV防止法の調査後に出すには完全に相応しくない上に、
「法解釈の拡張を推進している人達の手によって調査が行われているのでは?」
と私のようなヒネくれた人間には穿(うが)たれよう。また調査結果に表れている、
あれもこれもと暴力の範囲を拡張していった人間に対しては「破綻が予見できる
状態で結婚を考えるなんて、余程の物好きさんですね」とでも言ってやりたく思う。
 もちろん家父長制を当然の物とし、旧態依然とした九州男児のような父親に
とっては青天の霹靂の調査結果であろうと思う。しかし、『20代や未婚者では、
約4割がDV防止法が成立した事さえ知らなかった。』と云う一文を逆に考えれば
「DV防止法の成立や法文内容を知っているのは20代や未婚者以外だ」と云う
答えが導き出せてしまう。親父連中が驚くのは、この答えであるべきだろう。
(九州男児は当然カリカチュアライズ。「想像しやすいだろう」の一点で使用した)


 私は出来ちゃった婚自体がそもそも気に食わないが、社会人になってからの
友達であるK君が言った、「子供が出来て困る人とは初めからSEXをしない」を
至言として考えている。DVも同様であり、この法律に保護して貰わねば夫婦関係
が維持できない関係ならば離婚をすれば良いし、その見極めが出来ないままで
結婚するような配偶者であれば法律で保護する価値など無いと思っている。
勿論これは婚姻後早期にDVがあった夫婦の場合を指しており、そろそろ銀婚式
を迎えましょうか、などの夫婦関係に於いては仮定の限りではない。
 持論の理由に私の性別があるとは全く思っていないが、些かマッチョイズムに
過ぎるのかもしれない。出来る限り客観性に努めてはみたが怪しいものだ。


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